2025年度前期システム工学

曜日・時限 水曜日4時限 期別 前期 週時間数 2
ナンバリング FL330904
開講学科等 医療福祉工学部-医療福祉工学科
医療健康科学部-医療科学科
教員名 松村 雅史
松村 雅史
職務履歴

https://research.osakac.ac.jp/index.php?%e6%9d%be%e6%9d%91%e3%80%80%e9%9b%85%e5%8f%b2

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目的

 生体を一つのシステムと考え、その機能を解析し、理解することは、臨床医工学、医療機器・生体センシング、健康機器、知能情報システムの開発において必要です。この授業では、システム解析の基礎数学であるラプラス変換について説明し、入出力、静的システムと動的システム、システムの伝達関数とインパルス応答、ステップ応答、周波数応答、システムの安定性、医療分野への応用に関する知識について学び,理解できるようになることを目的としています。システム工学は臨床工学技士国家試験出題基準にある(毎年出題される)項目であり、脳の働きをモデル化する知能情報学の基礎的な分野です。
 システム工学の応用例として、外科手術ロボット、中枢神経系のモデルと人工知能、心電計の雑音除去、観血式血圧トラスンデューサの特性改善、除細動器の通電電流の制御などを説明し、医用治療機器におけるシステム工学的アプローチ(解析法、システム設計)の基礎を修得し、臨床医工学のシステム工学的アプローチについて知り,基本的な考え方を学びます。

授業計画

授業回 形式 学修内容 学修課題
1 AC 授業ガイダンス(学び方)、臨床医工学とシステム工学(総論)
1)システム工学の具体例として、外科手術ロボット、中枢神経系と感覚神経&運動神経、中枢神経系のモデルと人工知能
2)システム工学の目的、評価方法
事前学修 シラバスを読み、目的、授業計画、到達目標を知る(1時間)
事後学修 生体系、電気系などのシステムに関する課題を行う(3時間)
2 AC 生体とシステム工学
生体とシステム工学について説明する。
1.システムとは、入力と出力の因果関係
2.動的システムと静的システム、時変システムと時不変システム
3.モデル(いろいろな現象を電気回路に置き換える)、線形と非線形(重ね合わせの定理)
4.生体システム(血圧制御、体温調節、視線視野制御など)
5.医療データサイエンス
事前学修 物事の振る舞いを入力と出力で考えてみよう(2時間)
事後学修 静的と動的、線形と非線形に関する課題を行う(2時間)
3 AC 信号とシステム、極座標と直角座標、オイラーの定理(Euler'sformula)と演習
人類の至宝exp(iπ)=-1を学ぶ
1.信号とは
2.基本的な信号(ステップ信号、インパルス信号、複素正弦波)
3.極座標と直角座標
事前学修 指数関数について調べる(2時間)
事後学修 極座標と直角座標に関する課題を行う(2時間)
4 AC 複素正弦波信号(フェーザ表示) 減衰振動 持続振動 発散振動)
指数関数 ネイピア数、正弦波信号とフェーザ表示について説明する。
事前学修 指数関数と正弦波について調べよう(2時間)
事後学修 指数関数 ネイピア数、正弦波信号とフェーザ表示に関する課題を行う(2時間)
5 AC 動的システムとLaplace変換
変数分離形、一階線形微分方程式の解法
事前学修 部分分数展開について調べよう(2時間)
事後学修 ラプラス変換、部分分数展開、一階定係数線形微分方程式に関する課題を行う(3時間)
6 AC システムの伝達関数(入出力の関係)とブロック線図
システムの入出力(微分方程式とLaplace変換)、伝達関数とブロック線図、ブロック線図を用いた血圧調節機能、呼吸と血圧の関係、前庭動眼反射の機能を表す生体モデルについて説明する。
事前学修 フィードバックとは何か?を調べる(2時間)
事後学修 ブロック線図から伝達関数を求める課題を行う(3時間)
7 AC システムの要素と入出力の関係式 一次系(CR回路)の時間応答
1)システムを構成する要素(比例要素、微分要素、積分要素、一次遅れ要素)の基本式、伝達関数
2)動的システム(電気系、流体系、熱系)の入出力の関係式
事前学修 電気回路素子(R、L、C)の電流と電圧の式を調べよう(2時間)
事後学修 電気系、機械系、熱系、流体系の一次系伝達関数と時間応答に関する課題を行う(3時間)
8 AC 一次系(CR回路)の周波数応答と演習
1)システムの周波数特性(振幅特性 位相特性)
2)回路素子(R、L、C)の周波数特性(インピーダンス)
3)CR積分回路(LPF)、CR微分回路(HPF)の周波数特性 しゃ断周波数
事前学修 周波数応答について調べる(2時間)
事後学修 CR回路の周波数応答に関する課題を行う(3時間)
9 AC 伝達関数と極(安定、臨界、不安定)
1)RLC回路、質量-粘弾性の力学モデルの入出力の関係式(2階微分方程式)の導出
2)二次系の伝達関数と極
3)二次系の時間応答(振動と非振動、収束、発散)
事前学修 RLC回路について調べる(2時間)
RLC回路、質量-粘弾性の力学モデルの入出力の関係式(2階微分方程式)の導出
事後学修 CR回路(LPF、HPF)のステップ応答、周波数応答に関する課題を行う(3時間)
10 AC フィルタのはたらき(時間応答と周波数応答)
1)CR回路(LPF)のステップ応答と周波数応答の関係
2)CR回路(HPF)のステップ応答と周波数応答の関係
フィルタの応用(心電図計測の雑音低減)
1)生体電気信号の振幅と周波数帯域、フィルタを用いた心電図の雑音低減
2)微分要素の周波数応答、CR微分回路の特性
3)積分要素の周波数応答、CR積分回路の特性
事前学修 CR回路、微分要素、積分要素について調べる(2時間)
事後学修 CR回路(LPF)のステップ応答と周波数応答の関連に関する課題
生体電気信号 微分特性 積分特性に関する課題を行う(3時間)
11 AC 2次系の時間応答と周波数応答
二次系の時間応答と周波数応答と演習
1)RLC回路の出力に振動が発生する条件(伝達関数の極が虚数となる)
2)RLC回路の周波数応答では共振周波数で出力が大きくなる。
事前学修 RLC回路の伝達関数、応答を復習する(2時間)
事後学修 二次系の周波数応答の計算課題を行う(3時間)
12 AC システム工学の応用(信号処理)
生体電気信号の計測における雑音除去(オフセットの除去、高周波雑音の除去)
観血式血圧トラスンデューサの特性改善
システム工学の応用(除細動器の応答)
事前学修 心電計、観血式血圧測定法と除細動について調べる(2時間)
単相性減衰正弦波(MDS:Monophasicdampedsinusoidal)波形
二相性切断指数関数波形(BTE:Biphasictruncatedexponential)
事後学修 フィルタの応用に関する課題を行う(3時間)
13 AC システム工学(理論、特性、制御)、学修到達度を確認する問題(小テスト)
システム工学で学んだ知識は生体計測、治療機器、安全管理に応用されています。
システム工学の学修到達度を確かめる問題(小テスト)を行います。
事前学修 信号とシステム、システムの応答、応用例について復習する(3時間)
事後学修 システム工学の学修到達度を確かめる問題の復習を行う(1時間)

授業形式記号

  • A:一斉授業(通常の講義)
  • B:問題発見・解決学習、プロジェクト学習
  • C:体験、実験、実習、演習など
  • D:調査 分析、解析など
  • E:ものづくり、作品制作
  • F:グループワーク(ディスカッション・ディベートを含む)
  • G:プレゼンテーション
  • H:地域・企業 連携型学習
  • I:その他

到達目標

 心電図の雑音除去、除細動器の仕組み、心臓カテーテルの特性、体外循環装置の血流の流れ(ダイナミクス)を理解するための数学的基礎とシステム工学的な考え方を修得し、動作原理の理解を深める。また、臨床工学技士国家試験やME技術に関する問題ができるように演習を行うことで実力を養成することを目指します。ただし、授業計画は予定であり講義の進み具合により変更することがあります。

到達目標
〇知識・理解【DP-L-1-1】、【DP-L-1-2】、【DP-L-1-3】
(1)信号表現に関する基礎数学(微分積分、複素数)の計算ができ、説明することができる。
(2)微分方程式とLapLace変換に関する基礎的な計算ができ、説明することができる。
(3)システムの伝達関数、ブロック線図に関する基礎的計算ができ、説明することができる。
(4)一次系の伝達関数、時間応答、周波数応答に関する基礎的計算ができ、説明することができる。
(5)二次系の伝達関数、時間応答、周波数応答に関する基礎的計算ができ、説明することができる。
(6)医学と工学に知識を用いて、生体機能とシステム工学の関りについて調べることができる。

評価方法と評価観点

評価方法 配点合計知識・理解力応用力コミュニケーション力態度・志向性創造力 合計
定期試験またはレポート試験 0%
小テスト、小論文 80% 50% 50% 100%
グループワーク 0%
プレゼンテーション 0%
レポート、宿題 20% 50% 50% 100%
授業での姿勢(ノート、質疑など) 0%
作品、パフォーマンス(実技、実演) 0%
その他1(具体的に: 0%
その他2(具体的に: 0%
100% 50% 50% 0% 0% 0% 100%

教科書・参考書

教科書:
1)授業内容および例題、演習課題、関連する臨床工学技士国家試験問題を取り入れ、式の導出、応答の計算・グラフ作成を自主的に行うオリジナルテキスト(学務課で配布)

参考書:
1)臨床工学技士標準テキスト(第4版)、医歯薬出版株式会社
  臨床工学技士国家試験の出題基準(令和3年)に基づいた標準テキスト
2)プレミア保存版 微分と積分 プレミア保存版シリーズ 科学雑誌Newton
3)Newton別冊『微分と積分 改訂第3版』 科学雑誌Newton
4)Newton別冊『こんなに便利な指数・対数とベクトル』 科学雑誌Newton

オフィスアワー

火曜日、水曜日5限、松村研究室
会議などで不在の場合があります。質問等についてはOECUメールでも受け付けます。
授業に関する資料はMoodleで提供します。
(1)心臓内に挿入する観血式血圧センサの基本式、除細動器の電流波形は、微分方程式で表される。本講義では、医用治療機器などの物理現象を数式で表すため、数学系の科目も必ず受講して、数学的知識を修得しておくこと。
(2)エレクトロニクス入門、電気回路学、応用電気回路学、電子回路学、計測工学の授業内容にも関係するので、これらの科目も必ず履修すること。

その他

1)授業ごとの実施(遠隔・面接、コンテンツ、課題)については、Moodle等で案内しますので、必ずチェックしましょう。
2)本科目の学修到達度を確認する問題(面接授業、小テスト)は必ず受けましょう。
3)学修状況の確認と要点整理(オリジナルテキストの整理)、質疑討論のために面接の機会を設けます。

実務経験のある教員による授業科目