2025年度後期企業社会と労働

曜日・時限 水曜日1時限 期別 後期 週時間数 2
ナンバリング FL310130,FS310131,FY310131,HB110126,HT110126,HW110126
開講学科等 医療福祉工学部-医療福祉工学科
医療福祉工学部-理学療法学科
医療福祉工学部-健康スポーツ科学科
医療健康科学部-医療科学科
医療健康科学部-理学療法学科
医療健康科学部-健康スポーツ科学科
総合情報学部-デジタルゲーム学科
総合情報学部-ゲーム&メディア学科
総合情報学部-情報学科
健康情報学部-健康情報学科 医療工学専攻
健康情報学部-健康情報学科 理学療法学専攻
健康情報学部-健康情報学科 スポーツ科学専攻
教員名 牧野 泰典
牧野 泰典
職務履歴

目的

 産業社会においては、産業社会に特徴的な技術システムの高度化や、制度の大規模化・複雑化などから、特有の人間関係が発達し、労働疎外等も問題になることが多い。こうした産業における人間関係、労働疎外の問題、これらと関係して重要な意味をもつ組織の動態など、産業社会の諸制度について考察する。学生は就職活動や就職後の労働環境を前提に授業内容を理解することが重要である。
 これに関連して、グローバル化が拡大するなかで、日本企業が海外展開するにつれてその労務管理や生産管理、労使関係が注目されるようになった。グローバル化による競争の波は製造業にも及び、日本が誇った製造業における技術的優位性は揺らぎを見せている。日本企業、とくに製造業では(1)1970年代に自動車産業を中心に輸出世界一に躍り出たこと、(2)1980年代に「JapanasNo1」といわれるまでの経済力を誇ったこと、(3)1990年代に企業改革が進まず「失われた10年」によって競争力を低下させたこと(4)2000年代には非正規雇用の増加とともに企業における社員の技術・技能の蓄積が低下していること、という一連の経緯をたどっている。本講義では、これらを踏まえて以下の分析を行っていきたい。第一にモノづくりの領域では日本の品質管理の手法は海外企業や日系企業にも幅広く採用されるほどに積極的に評価されていたこと、第二に脆弱な労働組合の交渉能力によって、労働者の労働環境を向上させられなかったことが厳しく批判されたことである。この両面をとらえ、日本における企業社会とはどのようなものか、そこにおける企業内の労務管理、教育訓練品質管理、労働市場におけるキャリアアップなど各制度や、長時間労働などの職場環境の課題をあらためて分析することにする。
 なお本学のディプロマポリシーにそって、社会人として主体的に働くための、企業や社会の情勢を理解し、適切な判断をし、自らの意思をチームに正確かつ適切に表現する能力を養成することを目指す。

授業計画

授業回 形式 学修内容 学修課題
1  終身雇用に関わる「解雇権濫用の法理」 事前学修  就職活動の予備知識としてかつての「終身雇用」とは何かを調べる(2時間)
事後学修  就職活動では、「終身雇用」が今後は保障されないことを前提に取り組むことが重要であることを理解する(2時間)
2  「解雇ルールの金銭解決」とは「解雇権濫用の法理」に関する司法判断 事前学修  政府の「産業競争力会議」において解雇規制の緩和が議論されていることを理解する(2時間)
事後学修  解雇規制の緩和が「解雇解決金 制度」として厚生労働省で基本が作成されていることを理解する(2時間)
3  「職務拡大」(jobenlargement)と「職務充実」(jobenrichment) 事前学修  「仕事におけるキャリアアップ」の概要について理解する(2時間)
事後学修  学生のキャリアアップのための語学力や資格取得などの能力向上が重要であることを理解する(2時間)
4  HRM(HumanResourceManagement)人的資源管理 事前学修  人材を活用することの重要性について理解する(2時間)
事後学修  人材を活用するための組織、教育体系、資格取得などの重要性について理解する(2時間)
5  新卒一括採用の問題点 事前学修  大学3回生からの就職活動の概要について理解する(2時間)
事後学修  授業における過去の受講生の就職活動の体験談の紹介事例を通じて、多くの試行錯誤が重要なことについて理解する(2時間)
6  既卒と第二新卒の相違点 事前学修  大学卒業後の進路について色々な事例を理解する(2時間)
事後学修  日本企業における単線化したキャリア形成の課題について理解する(2時間)
7  日本経団連の主張する「多様な働き方」とは、安価な労働力を活用することを助長するものとして問題点 事前学修  「多様な働き方」が一般的にどのような印象を持たれているかについて理解する(2時間)
事後学修  「多様な働き方」が実際には不安定で流動的な非正規雇用が多くなっている課題について理解する(2時間)
8  派遣社員のなかでも極めて雇用が不安定な「登録型派遣」 事前学修  「派遣労働」の流動的で不安定な雇用について理解する(2時間)
事後学修  「派遣労働」の登録型派遣の問題点や、さらに労働環境が低い個人請負の課題について理解する(2時間)
9  OJT(OnTheJobTraining)とOff-JT(OffTheJobTraining) 事前学修  職場内の教育訓練制度の概要について理解する(2時間)
事後学修  企業が即戦力を求める傾向が強いため、これまでの職場内の教育訓練制度が不十分なことについて理解する(2時間)
10  「内部労働市場」と「外部労働市場」の相違点 事前学修  就職に関連する労働市場の概要について理解する(2時間)
事後学修  日本企業で終身雇用が減少するなかで、流動的な雇用環境になっていることについて理解する(2時間)
11  残業代に関する「ホワイトカラーエグゼンプション」とは何か 事前学修  日本企業の未払い残業代の概要について理解する(2時間)
事後学修  これらの残業代ゼロ法案は「高度プロフェッショナル労働制」(働き方改革)で制度化されていることを理解する(2時間)
12  就職に関して、景気後退で有効求人倍率(とりわけ正規雇用者)が低下するなかで、日本では属性主義(世襲や縁故:コネクションによる地位獲得)が顕著になっている現状 事前学修  有効求人倍率とは何かについて理解する(4時間)
事後学修  有効求人倍率でも非正規雇用者と正規雇用者のものがあり、後者の倍率が就職率にとって重要であることを理解する(4時間)
13  離職者や既卒者などについて、農林業や介護職に従事させる政策 事前学修  失業対策の重要性について理解する(4時間)
事後学修  失業対策でも幅広い職種を選択できることの重要性について理解する(4時間)

授業形式記号

  • A:一斉授業(通常の講義)
  • B:問題発見・解決学習、プロジェクト学習
  • C:体験、実験、実習、演習など
  • D:調査 分析、解析など
  • E:ものづくり、作品制作
  • F:グループワーク(ディスカッション・ディベートを含む)
  • G:プレゼンテーション
  • H:地域・企業 連携型学習
  • I:その他

到達目標

製造業における企業内諸制度も理解する

1フォード型生産システムにおける作業工程と労務管理
2単純作業と労働疎外の問題-R.ブラウナーの理論を中心に-
3労働の人間化(QWL)を考慮した職場組織と作業工程
4日本型生産システムの特色-かんばん方式、JIT、多能工化、プルシステム-
5小集団活動の特色-品質管理を行う現場労働者の作業改善-
6海外企業・日系企業の小集団活動-海外のKAIZEN(1)-
7海外企業・日系企業の小集団活動-海外のKAIZEN(2)-
8「Japanization」と称される日本企業の海外展開とその問題点
9日本企業の労働慣行の問題点(1)-超長時間労働と労働密度-
10日本企業の労働慣行の問題点(2)-人事考課査定制度と成果主義の強化-
11日本企業の労働慣行の問題点(3)-企業別組合における労使関係の問題点、管理職ユ
ニオン・サイバーユニオンなどにおける新しい取り組み-
12製造業における日本型生産システムの変容の可能性-海外企業・日系企業が日本国内
の企業の職場組織・作業工程に影響を与える諸要因-
13グローバリゼーションが日本企業に与える影響(1)-ホワイトカラー・エグゼンプショ
ンが日本企業の低賃金・重労働を強化する可能性について-
14グローバリゼーションが日本企業に与える影響(2)-労働コストの削減-
15働く貧困層(ワーキングプア)の増加が、労働者の企業への帰属意識や技術・技能の蓄積にどのような影響をもたらすか-
 
  この授業を受講することで、「豊かな人格形成の基盤となり、社会との関りを考える力」【工学部統一DP(1)】や、問題分析能力・問題解決能力・社会のニーズに対応できる総合能力【情報通信工学部統一DP(1)~(3)】を身につけることができる。

科目に関連するディプロマポリシー項目
〇2024年度以降入学生
下記、記載のカリキュラムマップを参照。
https://www.osakac.ac.jp/about/policy/faculty/
※各学科/専攻名称のカリキュラムポリシー下段の
 「カリキュラムマップ」よりご確認ください。
* それ以前の入学生 方針(ポリシー) https://www.osakac.ac.jp/about/policy/ 参照


 

評価方法と評価観点

評価方法 配点合計知識・理解力応用力コミュニケーション力態度・志向性創造力 合計
定期試験またはレポート試験 0%
小テスト、小論文 0%
グループワーク 0%
プレゼンテーション 0%
レポート、宿題 80% 65% 35% 100%
授業での姿勢(ノート、質疑など) 20% 65% 35% 100%
作品、パフォーマンス(実技、実演) 0%
その他1(具体的に:  「試験に代わる 授業内レポート」 の 採点 解説 は google moodle に 記述 する 0%
その他2(具体的に: 0%
100% 65% 35% 0% 0% 0% 100%

教科書・参考書

 [教科書]牧野泰典『小集団活動の機能と役割』{八千代出版」}2001.(第二刷2005.)(主にレジュメによる授業を行う)

 [参考書]上西・小玉・川喜多・伊藤共著『大学のキャリア支援』{キャリア形成叢書}2007.

 小池和男『仕事の経済学(第3版)』{東洋経済新報社}2005.

 鈴木竜太『組織と個人キャリアの発達と組織コミットメントの変化』{白桃書房}2005.

田尾雅夫『会社人間の研究』{京都大学学術出版会}1997.

田中秀樹「戦略的人的資源管理論の整理」『同志社政策科学研究』{同志社大学}第1巻

第1号2008.

日本労働研究機構『大卒ホワイトカラーの人材開発・雇用システムの国際比較(2)

アンケート調査編』{日本労働研究機構}1998.

オフィスアワー

 メールによる学生の質問がある場合、個別にメールアドレスを教えるなどで対応(オフィースアワーについては、授業時間後、教室にて質問も受け付ける)。授業内で課題の提出物として練習問題を解いてもらうが、その解答については授業内で説明し、授業内 課題レポート の対策とする。

 学生の在学中から求められる行動
 企業は新卒一括採用にこだわることが多い一方で、新卒の社員にも即戦力となれる能力を持つ者を求めるようになった。言い換えるならば、入社後に丁寧に企業内教育訓練を行うことが減少している。これに対応するには、学生が在学中から職業観を醸成し、どんな業種や職種を志望しているのか、自分についての職業適性は何かということを考えながら学習に取り組んでもらいたい。
なお、授業への取り組みにあたり、著しく態度不良な学生は受験資格を認めないので留意すること。

その他

 小レポート、授業内 課題レポート の提出は、適宜判断するので、指示に従うこと。 出席点は基本的に評価の対象外です 出席率が低い場合は未認定となりますが、出席で 点数 が加算されることはありません

 フィードバックについては
1 課題はmoodleに提出する。 
2 『試験に代わる 授業内レポート』の採点と解説はmoodleで公開する

実務経験のある教員による授業科目