2025年度後期ワイヤレス通信

曜日・時限 月曜日4時限 期別 後期 週時間数 0
ナンバリング GF330114
開講学科等 情報通信工学部-通信工学科
教員名 柴垣 佳明
柴垣 佳明
職務履歴

https://research.osakac.ac.jp/index.php?%e6%9f%b4%e5%9e%a3%e3%80%80%e4%bd%b3%e6%98%8e

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目的

今日の高度情報化社会において,ワイヤレス(無線)通信技術が果たす役割は,広域の放送や衛星通信システムから近距離の携帯電話や無線LANまでますます重要なものとなっている。ワイヤレス通信はまず送信側に音声や画像などの情報を変調して,次に伝送路を経由して受信側に送り届け,最後に受信側に復調して元の内容に戻す過程によって実現している.変調・復調は通信方式によって違い,別の科目で扱われている.送受信間の信号の受け渡しは一般に伝搬路と呼ばれ,有線の場合はケーブルや導波管,光ファイバと言う伝送線路によって行われ,ワイヤレス通信の場合は送受信アンテナとその間の電波の伝搬によって実現している.アンテナ工学では電波の送受信するアンテナについて学んだが,この科目では空間に伝搬する電磁波について理解を深める.適切な通信回線の設計を行うためには,電波が様々な条件下でどの様に伝搬するかを的確に把握しておくことが必要である。本講義では,媒質中に伝搬する電磁波,平面や球面大地や大気による電波伝搬の影響,電離層中の電波伝搬を学ぶ。各種形状の物体による電波の散乱や伝搬に与える影響を学び,またレーダの原理についても理解を深めることを目的とする。

授業計画

授業回 形式 学修内容 学修課題
1 遠隔A,C ワイヤレス通信で扱う「電波伝搬」の概要と、身の回りで生じる伝搬現象の具体例を示して、これから授業で述べる電波伝搬の諸問題の紹介を行う。また電波利用の歴史について、その開始以来より高い周波数を開拓する方向で進んできたことを述べ、それらの過程で生じた電波伝搬上の問題点等を指摘する。 事前学修 電磁気学やアンテナ工学で学んだ電磁誘導や電磁波の知識を復習しておくこと(2時間)。

事後学修 現在のワイヤレス通信ではUHF帯以上の高い周波数が主流であることを課題による理解を深める(2時間)。
2 遠隔A,C マクスウェルの方程式から平面波近似の場合の波動方程式を導出し、垂直偏波と水平偏波を記述する式について述べる。 事前学修 平面波を表す式について予習のこと(2時間)。
事後学修 マクスウェルの方程式が特定の各周波数ωの場合の式の導出を課題により理解すること(2時間)。
3 遠隔A,C ポインティングベクトルによる電力束密度を導入し、球面波が自由空間を伝搬する場合の自由空間伝搬損失やフリスの伝送公式について説明する。 事前学修 ポインティングベクトルについて調べておくこと(2時間)。
事後学修 送信電力と送信アンテナ利得から受信点の電界を求める式を課題により導出して理解すること(2時間)。
4 遠隔A,C 異なる媒質間を伝搬するときに生じる入射波の反射や透過を定量的に説明し、水平偏波(TE波)と垂直偏波(TM波)の反射係数の違いを述べ、垂直偏波に特有なブリュスター角の特徴について触れる。 事前学修 スネルの法則とブリュスター角について予め調べておくこと(2時間)。
事後学修 理なる媒質間の入射角と透過角の関係をスネルの法則を用いて求めることを課題により理解すること(2時間)。
5 遠隔A,C 直接波と大地反射波からなる地面反射二波モデルを説明し、受信アンテナのハイトパターンピッチと伝搬損失の距離特性で現れるブレークポイントについて述べる。 事前学修 大地反射波の影響について調べておくこと(2時間)。
事後学修 伝搬損失の距離特性で現れるブレークポイントについて課題により理解すること(2時間)。
6 遠隔A,C 電波の回折現象に関して、ナイフエッジ回折とフレネルゾーンについて説明する。また、フレネル楕円体と第1フレネルゾーンの半径を導出し、伝搬路に対する障害物との関係を述べる。 事前学修 ナイフエッジ回折とフレネルゾーンついて調べておくこと(2時間)。
事後学修 電波の通路に障害物が与える距離の範囲について課題により理解すること(2時間)。
7 遠隔A,C 電離層伝搬の初回として、電離層と電離圏の関係、電離層伝搬で問題とされる周波数や電波利用における時代背景の概略を述べる。また電離層で電波が反射される理由をマクスウェルの方程式を基に原理的に説明し、電離層伝搬で重要なプラズマ周波数、臨界周波数、およびアイオノグラムを紹介する。さらに、電離層伝搬を用いて遠距離通信を行う場合の基礎となる「正割法則」を導出する。 事前学修 電離層について調べておくこと(4時間)。
事後学修 電離層での電波の屈折率と周波数および電子密度の関係式を課題により理解できる様にする(4時間)。
8 遠隔A,C 電離層のD層、E層、F層の各層の高度や電子密度と、VLF、LF、MF、HFの各周波数帯の伝搬形態の差異について述べる。特にHF帯での長距離伝搬で重要は跳躍距離の導出方法を述べ、その特徴を示す。 事前学修 正割法則ついて復習しておくこと(2時間)。
事後学修 VLF、LF、MF、HFの各周波数帯の利用方法と、臨界周波数と送信周波数から送信可能な距離を計算する方法について課題により理解できる様にする(2時間)。
9 遠隔A,C 電離層におけるVLF、LF、MF、HFの各周波数帯の伝搬特性をさらに詳しく説明し、電離層伝搬で問題となる各種フェージングの性質を述べる。 事前学修 跳躍距離について復習しておくこと(2時間)。
事後学修 VLF、LF、MF、HFの各周波数帯の伝搬特性と、伝搬路で発生する各種フェージングの性質について課題により理解できる様にする(2時間)。
10 遠隔A,C 高度10km以下の対流圏伝搬で用いられる電波の特徴を述べる。周波数はVHF帯以上が用いられ、地上のテレビ放送、FM放送、あるいは移動体通信での利用が中心となり、マイクロ波帯以上では衛星通信回線等の固定局間の利用が主となる。初回は、対流圏伝搬で重要な大気の屈折率の高度分布について説明する。 事前学修 対流圏の特徴ついて予め調べておくこと(2時間)。
事後学修 VHF帯およびUHF帯の電波と、周波数がそれより高いマイクロ波帯電波の利用方法の差異を課題により理解電離層による(2時間)。
11 遠隔A,C 対流圏伝搬における電波伝搬路の特徴を記述するために、球面大地上のスネルの法則を導出する。また平面大地を仮定した場合の伝搬路を示すための修正屈折率と修正屈折指数について述べる。さらに標準大気の屈折率度分布を用いて、電波の通路が直線となるように補正を行うための等価地球半径係数を説明する。 事前学修 修正屈折率と等価地球半径について予め調べておくこと(2時間)。
事後学修 等価地球半径係数を大気屈折率の高度変化から導出する方法を課題により理解を深めること(2時間)。
12 遠隔A,C 対流圏伝搬の見通し内で発生するフェージングの種類と諸特性について述べる。特に地表面近くの大気屈折率の高度分布が原因で生じる「k形フェージング」に重点を置き、「干渉性フェージング」と「回折性フェージング」の発生メカニズムと特性の違いについて説明する。 事前学修 k形フェージングついて予め調べておくこと(2時間)。
事後学修 干渉性フェージングと回折性フェージングの差異ついて課題により理解を深めること(2時間)。
13 遠隔A,C 対流圏伝搬の見通し外伝搬で受信される「回折波」や「対流圏散乱波」の特徴を述べる。また降雨時に衛星通信等のマイクロ波伝搬で問題となる「降雨減衰」や「交差偏波識別度」の発生メカニズムについても説明する。 事前学修 今までの内容を総括して復習しておくこと(4時間)。
事後学修 10GHZの高い周波数帯で問題となる降雨減衰について課題によりさらに理解を深めること(4時間)。

授業形式記号

  • A:一斉授業(通常の講義)
  • B:問題発見・解決学習、プロジェクト学習
  • C:体験、実験、実習、演習など
  • D:調査 分析、解析など
  • E:ものづくり、作品制作
  • F:グループワーク(ディスカッション・ディベートを含む)
  • G:プレゼンテーション
  • H:地域・企業 連携型学習
  • I:その他

到達目標

○修得する資質・能力:知識・理解力、応用力【DP-F-1-1】
(1)地上における電波伝搬特性を理解する.
(2)平面大地による平面波の反射,透過係数の計算ができるようにする.
(3)フレネルゾーンの原理を学ぶ.
(4)層状大気中の電波伝搬を理解する.
(5)電離層による電波の反射を理解する.
(6)フェージングと雑音の原因を学ぶ.
○修得する資質・能力:総合的な学習経験と創造的思考力【DP-F-4-1】
無線従事者免許の取得等に生かせる技術と能力を身につける.

評価方法と評価観点

評価方法 配点合計知識・理解力応用力コミュニケーション力態度・志向性創造力 合計
定期試験またはレポート試験 50% 50% 30% 20% 100%
小テスト、小論文 20% 70% 20% 10% 100%
グループワーク 0%
プレゼンテーション 0%
レポート、宿題 30% 70% 20% 10% 100%
授業での姿勢(ノート、質疑など) 0%
作品、パフォーマンス(実技、実演) 0%
その他1(具体的に: 0%
その他2(具体的に: 0%
100% 60% 25% 0% 0% 15% 100%

教科書・参考書

教科書:「電波伝搬」岩井誠人、前川泰之、市坪信一共著、朝倉書店
毎回の授業や定期試験で使用します。

参考書:「電波伝送工学」安達三郎、米山務共著、コロナ社
「電磁波工学」安達三郎、コロナ社
「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎」唐沢好男,コロナ社

オフィスアワー

オフィスアワーは、月曜17:15~18:00にA号館2Fの研究室36に設定していますが、
それ以外の時間で質問がある場合は、平日の17:15以降に研究室まで来てもらって構いません。

その他

前期に「アンテナ工学」を受講して下さい,ただし,その合否は本講義の受講条件としない.
欠席回数が4回以上の者は、原則、定期試験を受験したとしてもE評価となります。

課題については、授業内で適宜、解説・解答を行い、フィードバックします。

実務経験のある教員による授業科目