2025年度前期量子物理学

曜日・時限 火曜日4時限 期別 前期 週時間数 2
ナンバリング EE430706
開講学科等 工学部-電気電子工学科
教員名 富岡 明宏
富岡 明宏
職務履歴

https://research.osakac.ac.jp/index.php?%e5%af%8c%e5%b2%a1%e3%80%80%e6%98%8e%e5%ae%8f

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目的

トランジスタを初めとして,現代のエレクトロニクスは量子物理の黎明とともに誕生し,発展してきたと言っても過言ではない。このような観点から,本講義では電子工学に用いられる半導体等の諸性質を理解するための,量子物理の解説を行う。「固体物理学」で学んだ量子力学基礎をもとに,固体中での電子の振る舞いが量子物理ではどのように把握されるのか,根源にさかのぼって学ぶ。光の回折現象と対応づけて物質の波としての挙動を解説し,不確定性原理の様々な帰結を説明する。Schroedinger方程式の解としての固有状態・固有エネルギーが物質の状態を規定する考え方を解説し,解としての波動関数の許容される形態を図式を交えて考察する。このような手順を踏んで,これまで学んできたニュートン力学の「決定論的な捉え方」とは異なる,確率的にしか決まらない「不確定な実在」を記述する量子力学的な描像を会得することが本講義の目的である。レーザダイオードの動作原理や,ハードディスク読み書きヘッドに使われているGMR磁性超薄薄における電子トンネリング現象などの理解につながると期待できる。

授業計画

授業回 形式 学修内容 学修課題
1 面接授業:A,C 光の干渉と物質波の干渉

事前学修 「量子論の形成史」を予習する(1時間)
事後学修 「量子論の形成史」を復習する(3時間)
2 面接授業:A,C ダブルスリットの通過と観測による波束の収縮

事前学修 「粒子性と波動性」を予習する(1時間)
事後学修 「粒子性と波動性」を復習する(3時間)
3 面接授業:A,C 波の回折と不確定性
1.位置の不確定性と回折現像の原理的対応
事前学修 「不確定性原理」を予習する(1時間)
事後学修 「不確定性原理」を復習する(3時間)
4 面接授業:A,C 波の回折と不確定性
2.水素原子のエネルギー準位と不確定性原理の整合性

事前学修 「波の回折」を予習する(2時間)
事後学修 「波の回折」を復習する(3時間)
5 面接授業:A,C 波動関数による描像
1.Schroedinger方程式とエネルギー固有値

事前学修 「波動関数」を予習する(2時間)
事後学修 「波動関数」を復習する(3時間)
6 面接授業:A,C 波動関数による描像
2.固有エネルギーの大小による波動関数の特徴の変化
事前学修 「固有エネルギー」を予習する(2時間)
事後学修 「固有エネルギー」を復習する(3時間)
7 面接授業:A,C 波動関数による描像
3.波動関数の接続
事前学修 「固有エネルギーと固有状態」を予習する(2時間)
事後学修 「固有エネルギーと固有状態」を復習する(3時間)
8 面接授業:A,C 波動関数による描像
4.粒子の存在確率と物理量の期待値
事前学修 「物理量の期待値」を予習する(2時間)
事後学修 「物理量の期待値」を復習する(3時間)
9 面接授業:A,C 波動関数による描像
5.基本的な物理量演算子と交換関係
事前学修 「交換関係」を予習する(2時間)
事後学修 「交換関係」を復習する(3時間)
10 面接授業:A,C 井戸型ポテンシャル
1.解のグラフ表示とその分類
事前学修 「井戸型ポテンシャル解のグラフ表示」を予習する(2時間)
事後学修 「井戸型ポテンシャル解のグラフ表示」を復習する(3時間)
11 面接授業:A,C 井戸型ポテンシャル
2.実際の系との対応
事前学修 「井戸型ポテンシャル実際の系」を予習する(3時間)
事後学修 「井戸型ポテンシャル実際の系」を復習する(3時間)
12 面接授業:A,C 調和振動子
1.上昇・下降演算子による解法
事前学修 「調和振動子」を予習する(2時間)
事後学修 「調和振動子」を復習する(3時間)
13 面接授業:A,C 黒体輻射
1.光子の状態数とBose-Einstein統計
2.Einsteinの自然放射・誘導放出モデルとの対応

事前学修 「黒体輻射」を予習する(2時間)
事後学修 「黒体輻射」を復習する(3時間)

授業形式記号

  • A:一斉授業(通常の講義)
  • B:問題発見・解決学習、プロジェクト学習
  • C:体験、実験、実習、演習など
  • D:調査 分析、解析など
  • E:ものづくり、作品制作
  • F:グループワーク(ディスカッション・ディベートを含む)
  • G:プレゼンテーション
  • H:地域・企業 連携型学習
  • I:その他

到達目標

2024年度以降入学生のディプロマポリシーとの対応
https://www.osakac.ac.jp/about/policy/faculty/
〇 専門知識・技能を修得し、実践する力【DP-E-1】
. 人と社会を理解し、自然に関する科学的知識と電気電子工学分野における基礎的な専門知識を有し、それらを適切に応用することができる
〇 コミュニケーション力【DP-E-2 】
. 知識と技術の伝達やグループ作業に必要な論理的思考力、文章力とコミュニケーション力を有し、他者と適切なコミュニケーションをとることができる
〇 自らを律し、学び続ける力【DP-E-5】
. 科学的な思考力で判断と決断を行い、粘り強い意志力で問題解決に取り組むことができる
〇 総合力【DP-E-6 】
. 新たな課題に対して、獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し、解決できる

2023年度以前入学生のディプロマポリシーとの対応
〇 修得する資質・能力: 知識・理解力、応用力 【DP-E-1-1】【DP-E-2-2】
(1)量子的状態の概念や考え方ができる。
(2)量子的状態と古典的状態の違いが説明できる。
(3)1次元のシュレーディンガー方程式を解くことができる。
(4)1次元の井戸型ポテンシャルや調和振動子のエネルギーと波動関数を求めることができる。
〇 修得する資質・能力: コミュニケーション力【DP-E-2-1】
量子物理学の学術的または技術的課題解決について、仲間と議論して得た知見を提出課題に反映させる。
〇 修得する資質・能力: 態度志向性【DP-E-3-3】
現代のICT技術の進歩について、今後の課題解決に向けた情報収集と考察を継続して行える。
〇 修得する資質・能力: 創造的思考力【DP-E-4-1】
現代のICT技術の進歩について、今後の課題解決に向けた独自の着想をを具体的に表現、発信できる。

評価方法と評価観点

評価方法 配点合計知識・理解力応用力コミュニケーション力態度・志向性創造力 合計
定期試験またはレポート試験 0%
小テスト、小論文 30% 50% 30% 20% 100%
グループワーク 0%
プレゼンテーション 0%
レポート、宿題 50% 30% 40% 15% 15% 100%
授業での姿勢(ノート、質疑など) 20% 50% 50% 100%
作品、パフォーマンス(実技、実演) 0%
その他1(具体的に: 0%
その他2(具体的に: 0%
100% 30% 29% 10% 14% 18% 100%

教科書・参考書

教科書:適宜資料をオンライン配布する。詳しく知りたい方は、
「理工学講座改訂量子物理学入門」青野朋義ほか著(東京電機大学出版局)
を読むことをすすめる。
 より易しい解説が欲しい人は、
参考書:「量子物理」森伸也編著(オーム社)
が読みやすい。

オフィスアワー

富岡明宏:(授業期間・期間外を問わず)火曜日、2限、W201-203(W号館2F 研究室)です。ただし、学内外の用務のため、オフィスアワーでも教員が教員室に不在の可能性があります。その場合にはtomioka@osakac.ac.jp宛てにメールを送り、時間を約束すれば、これ以外の時間帯でも対応可能な場合もあります。

その他

本講義の履修に先立って「物理学2」「現代物理学入門」「微分方程式」を履修しておくことが望ましい。
「固体物理学・演習」「半導体工学・演習」の学習事項に基づいた、より発展的な内容を講義するので、この2科目を合格した後でないと本科目の理解は困難である。本科目の課題・宿題をこなすためには、履修済みの人もこの2科目を復習してから講義に臨んでもらいたい。
学生の要望に応じて、適宜、課題やテストの解答を説明する。課題はほとんど毎回課されるが、一度でよく理解できなくても、多くの受講生が悩んだり、勘違いしている点を次週以降の授業で解説する。この解説を聞いた上で、課題を再提出することが、本講義の基本スタイルであり、課題の点数も向上しよう。全く同じことを書いているのに、自分はなぜ点数が低いのか、という質問を受けることがある。課題は答えが出ればよい、という観点ではなく、いかに論理的に読み手を説得できているか、を考慮して採点しているからである。この表現力は就職活動でも必須となるだろう。

実務経験のある教員による授業科目

富岡明宏:S61年5月~S63年9月の間、理化学研究所で研究員として勤務
理化学研究所での研究において培った物性物理学的な研究手法と得られた知識は、本講義で採り上げる抽象的な概念を肉付けし、具体例を通して受講生に具体的な事象イメージを伝えるのに大きな効力を発揮する。